12 薬剤師の常時病棟配置のメリット 薬の安全を担う

 奈須が会議から戻ると、ナースステーションには、薬剤指導に来ている薬剤師の岡田秀作(おかだしゅうさく)と病棟クラークの加藤美穂(かとうみほ)がいました。

加藤:師長さんお帰りなさい。先ほど、医事課の石崎課長から内線がありました。

奈須:ありがとう。

岡田:師長職、頑張ってるようだね。ところで、患者のAさんの処方は、これでいい?薬剤名が間違ってると思うけど。薬剤指導していて偶然わかったんだよ。

奈須:すぐに確認してくる。

 外科部長の山本茂(やまもとしげる)に確認すると、アマリール錠とアルマール錠を間違えたようだ。インシデントレポートを書いてもらえるように依頼し、内線を切った。

奈須:山本先生が、岡田さんにありがとうって言ってましたよ。

岡田:仕事していて、こんな時がうれしいね。ほかの職種が気付かなかったけど、我々が気付いた。これって専門職として一番うれしいことだよね。

奈須:病棟に薬剤師を配置してくれるように、薬剤部長に頼んでもらえないかな。

岡田:頼んでみようか。最近は、病棟に薬剤師を常時配置する病院も増えてきたしね。ただ病棟の薬剤指導が増えないと、配置は難しいよ。

奈須:そう言えば、これまで、気にしていなかったんだけど、病棟の薬剤指導は、何点取れるの?

岡田:知らなかったの?失礼だな。さては、これまで薬剤師は眼中になかったな。

奈須:そんなことないよ。(笑)

岡田:病棟の薬剤指導は、という指導料に分類されていて、(図4)のように2段階構造となっていんだ。1.特に安全管理が必要な医薬品が投薬又は注射されている患者の場合は380点、2.1の患者以外の患者の場合は325点(2020.4)。薬剤指導は、基本的に週1回指導を行うことによって、その都度、診療報酬の算定が可能なんだ。また、退院時の指導を行うことにより、50点が加算されることになるんだよ。結構、点数が高いでしょ。病院経営にとっても重要なんだよ。薬剤の指導内容は、知っていると思うけど、薬歴の管理や指導記録を作るから、医師の処方のくせなども分かるよ。処方を見ただけで誰の処方かわかる時もある。最近は、指導後の医師へのフィードバックが好評で、処方について相談されることも増えたね。やっぱり医師は、患者さんに処方した薬が効いているのかどうか心配だからね。この間なんか、患者さんがずーっと処方された薬を服用していないことが分かって、医師から感謝されたこともあったな。

奈須:ふーん、そうなんだ。これから病棟に、薬剤師が配属になれば、入院時の検薬もすぐにできるね。看護部長にも業務改善の一環としてお願いしてみるよ。薬剤師としても病棟指導は、花形なんでしょ。

岡田:まあ、そんなとこかな。ずーっと病棟指導しているのも疲れるけど、臨床に携われるのは、本望だよ。

加藤:脇でいい話を聞かせていただきました。私も病棟クラークを頑張らないと!師長さん、どんどん仕事をふってくださいね。